薬剤師転職は厳しい？成功するための業界知識とコツを解説！

「薬剤師の転職活動は厳しと聞いたけど本当かな？」
「応募できる求人が少ないと感じるけど気のせい？」
「自分だけ、なかなか決まらないのはなぜ？」

薬剤師の転職市場は、かつてのように“資格さえあればどこでも働ける”時代ではなくなりつつあります。
薬剤師の供給過多、調剤薬局の飽和、求められるスキルの高度化──さまざまな要因が重なり、転職のハードルは確実に上がっています。

でも、全薬剤師の転職が厳しくなったわけではありません。選ばれる薬剤師になるための準備をすれば、道は開けるからです。

この記事では、薬剤師の転職がなぜ難しくなっているのかを丁寧に解説しながら、「今すぐできる具体的な対策」をわかりやすくお伝えします。

読み終える頃には、「今の自分が何をすべきか」が明確になり、不安よりも前向きな一歩を踏み出せるはずです。

薬剤師の転職が厳しいと言われる理由とは？

薬剤師の転職が厳しい背景には、いくつかの現実的な要因がありますが、その中でも代表的なのが以下の3つです。

薬剤師の供給過多で競争が激化している

薬剤師の数が急増している、つまり供給過多となっていることが転職の難しさにつながっています。

薬学部の定員は2002年ごろまで全国で8,000人前後でしたが、6年制への移行を機に定員が拡大し、2021年には11,797人にまで増加。国家試験の合格者も増え、薬剤師の総数は大きく膨らみました。

» 厚生労働省(外部サイト)
» 薬剤師国会試験対策予備校(外部サイト)

さらに、定年後も現役を続ける高齢薬剤師が多く、若手が入り込める余地が限られているのも現状です。実際、「人手不足」の声がある一方で、都市部では採用を絞る薬局も増えており、地域によっては過剰感すらあります。

このように、薬剤師を取り巻く雇用環境はすでに飽和気味です。転職市場では「数が多いからこそ選ばれる理由」が必要となり、今後は経験や専門性の有無がますます重要になるでしょう。

調剤薬局の飽和で新規雇用が減少傾向

調剤薬局がすでに飽和状態にあり、新たな雇用が生まれにくくなっているのも、薬剤師の転職が厳しいと言われる理由の1つです。薬局の店舗数は頭打ちとなっており、新規出店による採用はもちろん、既存店舗でも増員を見送るケースが増えています。

厚生労働省の「医薬品提供体制調査」によると、薬局数は2021年時点で全国に約60,000施設を超え、過去20年で1.5倍以上に増加しました。しかし近年では、その増加に歯止めがかかりつつあり、地域によってはわずかに減少に転じるケースも出てきています。

» 厚生労働省(外部サイト)

店舗数の増加に比例して患者が増えているわけではないため、薬局間の競争は激化。特に都市部では患者の奪い合いが起き、経営効率を重視するあまり採用を抑える傾向が強まっています。

このように、「薬局が多すぎる」状態が続く中で、現場では人材の補充よりも人件費の抑制や内部リソースの再配置が優先されるようになっています。

結果として、調剤薬局への転職は以前よりも難しくなっており、「資格があればすぐに働ける」という時代ではなくなってきているのが現状です。

業務範囲の拡大で求められる能力が上昇している

薬剤師に求められる業務の幅が広がったことで、転職市場でも一定以上のスキルや専門性が強く求められるようになっています。単に資格を持っているだけでは、選考を通過しにくいケースも増えているのです。

従来の調剤・投薬指導に加え、在宅医療や健康サポート、服薬管理、医療チームの一員としての連携業務など、薬剤師の役割は年々拡大しています。厚生労働省の方針でも「対物から対人へ」という転換が進められており、コミュニケーション能力や個別対応力のある人材がより高く評価される傾向にあります。

加えて、現在は「かかりつけ薬剤師」の件数を増やすことが薬局の収益にも直結するため、患者対応力のある薬剤師が現場から求められている状況です。かかりつけ薬剤師になるには一定の経験や勤務年数が必要に加えて、服薬指導の質や継続的な関係性構築など、「選ばれる薬剤師」になるためのスキルが要求されます。

また、在宅患者への訪問対応や多職種との連携といった業務も重要です。未経験分野への適応力や意欲の有無が採用判断に大きく影響します。

このように、薬剤師の業務範囲が広がったことで、採用側も単なる人員補充ではなく「任せられる人材」を厳選する流れにシフトしており、結果として転職のハードルは以前よりも高くなっているのです。

転職が厳しくなりやすい薬剤師の4つの特徴

以下の4つに当てはまる薬剤師は転職活動が厳しくなってしまいます。

他の薬剤師と差別化できるスキルがなく、転職市場では埋もれている

薬剤師としての経験があっても、他の応募者と差別化できるポイントがないと、転職市場では埋もれてしまいます。
特に今は、単に「調剤ができる」「服薬指導ができる」だけでは、企業側に強く印象付けられません。

在宅医療、かかりつけ薬剤師、地域連携、OTC販売、新人教育や人事・採用──こうした分野での実績や専門性がある薬剤師は、現場から高く評価されやすくなっています。

逆に、一般的な業務経験だけで、特定分野に特化したスキルや取り組みがないと転職は厳しいです。ほかの「薬剤師でも代替可能」と見なされ、採用対象から外れてしまいます。

転職を有利に進めるには、自分がどの分野に強みを持ち、どんな場面で貢献できるのかを具体的に示すことが必要です。

転職回数が多く、継続性に不安を持たれやすい

転職回数が多く、短期間での転職を繰り返していると、「職場に長く定着しないのでは」という懸念を持たれがちです。

一般的に薬剤師1人を採用するのに最低でも100万円以上のコストがかかるといわれています。また、薬局によってルールや使用ツールが違い、教育にも時間とお金がかかるため、すぐに辞められる人材は企業側にとって大きな負担となるのです。

そのため、転職回数が多いというだけで、履歴書の時点で敬遠されることも珍しくありません。

もちろん、正当な理由がある転職であれば問題ありませんが、面接時には必ず理由を整理し、過去の職場でどのような成果や経験を積んだのかを具体的に伝えることが大切です。

» 職務経歴書の書き方完全ガイド

自分の市場価値を理解できず、チャンスを逃す

自分の市場価値を正しく理解していないと、希望条件と現実のギャップが大きくなり、転職活動が長引いたり、不採用が続いたりしやすくなります。

たとえば、自身のスキルや経験を過大評価して「もっと条件の良い職場に行けるはず」と思い込んでしまうと、提示された年収や職務内容に納得できず、自分によって良い条件を見逃すかもしれません。

逆に過小評価してしまうと、キャリアを活かしきれない職場を選んでしまい、やりがいを感じられなかったり、待遇に不満を抱えて再転職に至るリスクもあります。

市場価値を把握するには、業界全体の求人動向や平均年収、採用側が重視する経験などを把握することが欠かせません。転職活動では「自分は何ができるか」を深掘りし、「それが市場でどう評価されるか」を冷静に見極める視点が必要です。

そのためには、転職活動の初めてとしてまずは徹底的な自己分析をしてみるといいでしょう。

» 自己分析のやり方7種を紹介！

また、「自分の強みに気づけない」という人も多いです。自分にとっての当たり前が、実は他人にはない大きな強みであって、良い転職につながることがあります。

自分の強みを相談する人がいないという場合は、転職エージェントへの登録がおすすめです。転職エージェントに自分の今までやってきたことやできることを伝えることで、第三者目線のアドバイスがもらえます。さらに、その強みを活かした求人を紹介してくれるのも転職エージェントを使うメリットです。

» 薬剤師の転職エージェント・転職サイトの選び方

希望条件が多すぎて、転職市場で選択肢を狭めている

希望条件を細かく設定しすぎると、それに合致する求人はごくわずかしか存在せず、転職活動が長期化・難航しやすくなります。

「年収は下げたくない」「残業も避けたい」「通勤も楽な場所がいい」「在宅対応はしたくない」など、すべてを満たす職場を探してしまうと、選考にたどり着く前に求人がなくなるケースも少なくありません。

さらに、企業側からは「柔軟性がない」「職場に馴染みにくそう」と受け取られ、書類選考の段階で敬遠されるリスクもあります。

もちろん、すべての条件を妥協する必要はありません。ただし、「何を最優先にしたいのか」「どこなら譲れるのか」をあらかじめ整理しておくことで、自分に合った現実的な選択肢と出会いやすくなります。

転職成功のカギは、「条件を通すこと」ではなく、「続けられる環境を見つけること」です。

薬剤師転職を成功させるための5つのコツ

薬剤師が転職で成功するには、しっかりとした準備と戦略が必要です。

ただ求人を探して応募するだけでは、理想の職場にはなかなか出会えません。

この3つのポイントを押さえておけば、転職活動で有利に動けます。

ここからは、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

志望先の特徴や社風をよく理解する

採用されるためには、「なぜその職場を選んだのか」に明確な理由を持っていることが重要です。

転職活動では、自分が応募する企業や薬局の特徴・雰囲気をよく理解したうえで志望動機を語れなければ、他の応募者との差別化ができません。

中でも重要なのが、その会社がどういった取り組みをしているのかです。薬局の場合、調剤業務だけで稼げる時代は終わりを迎えつつあり、それ以外で利益を出せるかどうかが重要なカギとなってきます。

各社の取り組みとして以下のものが挙げられるはずです。

• かかりつけ薬剤師業務を強化して利益の確保に努めている
• 在宅訪問に力を入れている
• ドラッグストアとのシナジーを狙っている
• 健康食品など調剤以外の販売を強化している

調剤業務の収益が厳しくなる中で、企業がどのような方針で経営を維持しようとしているかを確認しておくことも重要です。

ほかにも、企業理念や社風、規模、業態（調剤のみかドラック事業はあるか）は確認しておきましょう。とくに全国規模で展開している会社の場合は転勤があるのか、ドラック事業が強い会社の場合は希望外の業務への異動はあるのか確認が必要です。

転職後のミスマッチを避けるためにも、求人票の表面的な情報だけでなく、実際に店舗を訪れて雰囲気を確認したり、口コミサイトや転職エージェントを通じて内部情報を集めたりするのも良いでしょう。

企業理解が深まれば、その職場でどう貢献できるかの視点も自然に整理され、説得力のある志望動機につながるはずです。

自分を棚卸しして強みと価値を正しく把握する

自分の経験やスキルを棚卸しすることで、「この職場でどう貢献できるか」が明確になり、採用される理由を作れます。

転職市場では「資格を持っているか」だけでなく、「その職場で何ができるか」を具体的に伝える力が求められます。

まずは、これまでに携わった業務を洗い出してみましょう。薬局や病院同士の転職の場合、調剤・服薬指導・監査といった基本業務ができるのは当たり前です。それに加えて、薬剤師業務、非薬剤師業務かかわらず経験のあることは全て書き出しましょう。

医薬品メーカーなど別業種からの転職の場合は、より差別化がしやすくなります。たとえばMRの場合は、「先生との交渉は任せてください」「店舗の数字を意識しながら業務にあたります」といった、薬局や病院勤務者にはない強みを打ち出せるからです。

強みが整理できれば、志望動機や自己PRにも一貫性が生まれます。採用される人は、自分の価値を説明できる人です。そのために、じっくり棚卸しの時間をとりましょう。

希望条件に優先順位をつける

希望条件に優先順位をつけることで、現実的な求人と出会いやすくなり、転職成功の可能性が高まります。

転職では、「年収を上げたい」「残業はしたくない」「通勤時間は短くしたい」「在宅は避けたい」など、希望が多くなるのは自然なことです。しかし、条件を絞りすぎるとマッチする案件そのものがなくなってしまいます。

さらに、希望を多く伝えすぎると、企業側には「扱いづらい」「こだわりが強い」という印象を与えてしまい、選考で不利になることもあるため、注意が必要です。

だからこそ大切なのは、「ここだけは譲れない」「ここは妥協できる」といった優先順位の線引きをしておきましょう。

この整理は、自己分析の一部でもあります。自分のライフスタイルやキャリアの方向性と向き合いながら、何を重視するのかを明確にすることが、結果的に満足度の高い転職に繋げましょう。

» 自己分析のやり方7種を紹介！

転職エージェントを活用する

転職エージェントを使うことで、自分ひとりでは見つけられない求人や情報にアクセスでき、転職成功の確率が大きく高まります。

転職エージェントを使う最大のメリットは、非公開求人を含めた幅広い選択肢の中から、自分に合った職場を提案してもらえることです。求人票ではわからない職場の雰囲気や人間関係、離職率などの内部情報を持っている場合もあり、転職後のミスマッチを減らせます。

さらに、応募書類の添削や面接対策、条件交渉の代行といったサポートを受けられる場合も。在職中で忙しい人でも効率的に動けるほか、初めての転職でも安心して進められる点も大きなメリットです。

ただし、転職エージェントを使えば全て上手くいくとは限りません。大切なのはすべてを任せきりにするのではなく、自分の希望や価値観をしっかり持ち、主体的に動くこと。

転職エージェントを上手に使って、理想の転職先を見つけましょう。

» 薬剤師の転職エージェント・転職サイトの選び方

資格取得や知識習得、新しい経験で専門性を強化する

転職活動と並行して専門性を高める努力を続けることで、将来的な選択肢が広がり、“選ばれる薬剤師”としての価値も高まります。

たとえば、認定薬剤師や専門薬剤師などの資格は、単なる肩書きにとどまりません。それを持っている専門性に加えて、常に新しいことを学ぼうとする姿勢も伝えられます。

ただし、認定資格や専門薬剤師の資格があるから無条件に転職に有利に働くわけではありません。取得する過程で得た経験や専門知識をどう活かしていくのか、しっかり伝えることで効果を発揮します。

したがって、大切なのは資格ではなく経験とそれが役に立つという説得力です。例えば、かかりつけ薬剤師の契約を獲得する、在宅業務に積極的に携わる、勉強会や学会に参加して日々の業務に活かす、ドラッグストア部門への異動を申し出てOTC医薬品やセルフメディケーションの知識をつける……

こういった、今の状況を変え成長する姿勢が、“選ばれる薬剤師”になる一歩です。自分には誇れるものがないと考えるほどこそ、心がけましょう。

転職活動中はどうしても目の前の求人探しに意識が向きがちですが、中長期的にキャリアを築いていくなら、学びを止めないことが何より重要です。

薬剤師転職に関するよくある質問（Q&A）

ここからは薬剤師転職に関するよくある質問について回答します。

転職市場で求められる薬剤師とは？

「スキルを広げたい」「在宅やかかりつけ業務に挑戦したい」「地域医療に貢献したい」など、転職先での成長や貢献を意識した動機が好まれます。また、自分がやりたいことと会社の方針が一致すると採用確率が高く、退職後のミスマッチも起きにくいため、事前のリサーチが重要です。

反対に、「人間関係が悪かった」「給料が低かった」といったネガティブな理由は、伝え方に注意が必要です。どう乗り越えようとしたかを添えることで、評価される場合もあります。

転職市場で求められる薬剤師とは？

調剤や監査といった基本業務以外にアピールポイントがある薬剤師が評価されます。

在宅医療の経験、かかりつけ対応、患者との関係構築、後輩の育成など、調剤業務＋αで会社に貢献している人物が求められているのです。また、異動や業務内容の変化に対応できる柔軟性も採用の決め手になります。

転職市場で評価されるためには、「自分が何をしてきたか」「その経験をどう活かせるか」整理して、言語化することが重要です。

転職時の給与交渉のポイントは？

希望額の根拠を持っておくことが重要です。前職の年収や業務内容、役職などをもとに、「なぜその金額を希望するのか」を説明できるようにしておきましょう。

「前の会社でこれくらいもらっていたから」「これくらい欲しいから」といった根拠のない交渉は厳禁です。

なお、条件に固執しすぎると印象が悪くなります。譲れるラインも事前に決めておくと交渉がスムーズです。

転職活動の期間はどのくらいが適切？

目安として2〜3ヶ月程度を見ておくと安心です。求人探しから内定までにかかる期間は、希望条件の多さや勤務中かどうかで変わります。

特に在職中で動く場合は、退職交渉や引き継ぎも含めて3〜6ヶ月前後かかるケースもあるため、早めの準備が重要です。

まとめ｜薬剤師転職が厳しくても、準備と戦略で突破できる

薬剤師の転職が厳しくなっているのは、薬剤師の数が増えすぎたことに加え、調剤薬局の飽和や即戦力志向の高まりなど、求人側の状況が大きく変化しているからです。

さらに、求職者の希望条件が細かくなっていることや、自分の市場価値や強みを把握できていないことも、マッチングを難しくしている要因です。

こうした中で理想の転職を実現するには、「なんとなく探す」のではなく、しっかりと準備を重ねたうえで臨むことが欠かせません。

志望先の理解、自己分析、条件整理、エージェントの活用、専門性の強化──できることから一つずつ取り組むことで、「選ばれる薬剤師」に近づいていけるはずです。

焦らず、着実に。今できる準備から始めていきましょう。

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